旅する記憶、紅型に込めた遠い憧れ

おはようございます。いつもブログを見ていただき、本当にありがとうございます。あなたがこうして興味を持ってくださることが、私たち城間びんがた工房にとって何よりの励みです。今日は少しだけ、私たちのことや今週末のイベントの話をお伝えしたいと思います。どうぞお付き合いください。

まず改めて、私たちは琉球王国時代から続く伝統工芸「紅型」を作り続けている工房です。私は16代目として、この工房の歴史を引き継ぎながら、職人たちとともに日々制作に向き合っています。紅型は王族や貴族の衣装として生まれた工芸であり、歴史の中でじっくりと育まれてきたもの。100年以上変わらない制作工程で、今でも昔ながらのやり方を大切にしています。

そしていよいよ、今週末の「祝いの布展」が迫ってきました。11月29日(金)と30日(土)の二日間、午前と午後の部で開催しますが、現在のところ29日の午後を除き、すべての枠が満席となりました。本当にありがとうございます!このイベントは、普段は工房見学をお断りしている私たちにとって、紅型の世界を知っていただく貴重な機会です。今回、あなたのような方々が足を運んでくださることに、感謝の気持ちでいっぱいです。

イベントでは、工房見学や琉球舞踊の鑑賞、ギャラリーでの作品展示をご用意しています。特に見学の時間では、職人が実際に制作している様子をご覧いただけます。紅型がどのように作られ、どんな工程を経て美しい作品に仕上がるのか、職人の手元を見ながら体感していただけると思います。

少し話はそれますが、今の沖縄の街にはトックリキワタの花が咲き始めています。この花は、ピンク色の鮮やかな花弁が特徴で、毎年この時期になると、まるで打ち合わせをしたかのように一斉に咲き始めます。その美しさには毎年目を奪われます。そして、この花が終わると、今度は緑色のナスのような形をした綿の実がなります。少し不思議な形ですが、これがまた面白い風景を作り出してくれるんです。

実はこのトックリキワタ、私が若い頃に滞在していたインドネシアでもよく見かけた木なんです。その頃の空気や香りを思い出すと、この花が私にとって特別な存在であることに気づきます。暖かい地域に広く分布する植物なのかもしれませんね。そう考えると、紅型もまた、沖縄の風土や文化を背景に育まれてきた工芸品。自然や環境と深く結びついているものだと改めて感じます。

今回のイベントを通して、紅型の魅力をより深く知っていただけると本当に嬉しいです。また、私たちが大切にしている職人としての姿勢や、工房の雰囲気を少しでも感じ取っていただけたら幸いです。日常ではなかなかお伝えしきれない部分を、ぜひこの機会に直接見て、触れていただけたらと思っています。

城間栄市 プロフィール

  • 昭和52年 沖縄県に生まれる。城間びんがた工房15代 城間栄順の長男。
  • 平成15年(2003年) インドネシア・ジョグジャカルタ特別州にて2年間バティックを学ぶ。
  • 平成25年 沖展正会員に推挙。
  • 平成24年 西部工芸展 福岡市長賞 受賞。
  • 平成26年 西部工芸展 奨励賞 受賞。
  • 平成27年 日本工芸会新人賞を受賞し、正会員に推挙される。
  • 令和3年 西部工芸展 沖縄タイムス社賞 受賞。
  • 令和4年 MOA美術館岡田茂吉賞 大賞を受賞。
  • 令和5年 西部工芸展 西部支部長賞 受賞。
    • 「ポケモン工芸展」に出展。
    • 文化庁「日中韓芸術祭」に出展。
  • 令和6年 文化庁「技を極める」展に出展。

現在の役職

  • 城間びんがた工房 16代 代表
  • 日本工芸会 正会員
  • 沖展(沖縄タイムス社主催公募展)染色部門審査員
  • 沖縄県立芸術大学 非常勤講師
  • 沖縄大学 非常勤講師