「波の歌」

染地型を中心に制作しましたが、白地型の空間を活かす可能性を探り、この構成に挑戦しました。型染めのリピートを利用し、不連続に見えるようでいて、全体としては連続性を持つような配色を工夫しました。波自体が不規則な存在であることを考慮しながら、着物として仕上がったときに色の繋がりが美しく見えるようデザインしました。

この作品は訪問着としての完成を目指しており、実際に着たときのバランスや美しさを意識しました。波の不規則さを図案に織り込みながらも、着用時の一体感を大切にし、より着物らしい美しい佇まいに挑戦しました。

物語

歌は祈り――この言葉が今回の作品の根底にあります。
さまざまな思いが言葉となり、言葉が繰り返されることで歌となる。悲しい出来事は平和を願う歌に、嬉しい出来事は優しい歌に紡がれていく。
私の祖先たちは波を越えて島々を繋ぎ、交流の中で独自の文様を生み出してきました。波が島に打ち寄せるように、文化も香りを漂わせながら行き来していました。

制作中、インドネシア風文様を波の模様に取り込むことに苦心していた時のことです。そんな中、妻が読んだ本の言葉を教えてくれました。「生きることは祈り」。この言葉を聞いた瞬間、それまでうまく取り込めなかったインドネシア風文様が波の模様に馴染むイメージが浮かびました。まるで音符が波に漂うように、文様が調和する様子が見えたのです。

島々が繋がり、思いが行き来し、それぞれの土地で花が歌を歌う――その情景が、この作品に込められています。
波を越えて繋がる祈りと文化の歌。その一節を、この着物に閉じ込めました。

城間栄順作品 城間栄市作品