「型紙と糊が織りなす紅型の物語」
2024.12.04
紅型の型置き工程について知っていただく」
今回は「型置き」という工程を通じて、紅型(びんがた)の魅力に少しでも触れていただけたらと思います。紅型に詳しい方にはお馴染みかもしれませんが、私たちがどのようにこの工程に取り組んでいるのか、詳しくお伝えします。
紅型(びんがた)の名前のルーツ
紅型は、琉球王国時代には「びんがた」や「かたちき」と呼ばれていました。「びん」とは赤色だけではなく、色全体を指す言葉。「かた」は型染めのことを意味していたようです。この名称は話し言葉として伝わってきたもので、漢字が当てられたのは明治時代頃と言われています。このように、紅型の名前からも分かるように、型を扱う「型置き」の工程は紅型の中でも特に重要なものです。
型置きの工程
写真のように、柄と柄のつなぎ目が美しく合うように型を合わせながら作業を進めます。この工程では、もち米の粉と米ぬかを混ぜた「糊(のり)」を用います。糊はただ混ぜるだけではなく、その柔らかさや粘り具合、乾燥の速さなどを細かく調整する必要があります。季節や天候によって糊の状態が変わるため、塩を入れて保湿性を高めたり、配合を微調整することもあります。
この型置きの際には、型紙の上から糊を丁寧に布に転写していきます。その際、繰り返しの模様(リピート)が途切れることなく、美しく続くようにすることが非常に重要です。この緻密な作業が、紅型の文様の繊細さと美しさを支えています。
古い技法と琉球の文化
紅型の型染めは、シルクスクリーンのように直接色を入れる型染めとは異なり、まず型紙で文様を白い布に転写し、その後、手作業で色を一つ一つ丁寧に塗り込んでいきます。この手法は型染めの中でも最も古い方法とされています。
こうした古いやり方が残り続けている理由には、紅型の起源である琉球王国が影響しています。紅型は、王族や貴族のために一点物を作る文化の中で生まれた工芸です。そのため、大量生産を目指すことなく、細やかで丁寧な手仕事を大切にする伝統が受け継がれてきました。また、沖縄特有のゆっくりとしたリズムも、この技法が廃れることなく続いている理由の一つかもしれません。
型置きの風景
今でも工房では、職人が型紙を手に取り、布に糊を置いていく作業が日常的に行われています。大量生産には向かないこの方法ですが、その分、文様の美しさや手仕事の温かみを伝えることができます。紅型の工房で見られるこの風景は、昔から変わらず受け継がれてきたものです。
もし、こうした紅型の工程や文化に興味を持っていただけたなら、とても嬉しく思います。型置きという地味ながら重要な工程に込められた職人の技と、沖縄の伝統を感じていただければ幸いです。