「伝統の中に未来を見る:紅型イベントを終えて」

イベントを振り返って ~「祝いの布展」とその余韻~

イベント「祝いの布展」が終わり、あれから約2週間が経ちました。工房も日常のペースを取り戻し、私自身も改めて「やはり物づくりと静かに向き合う時間が何より好きだ」と実感しています。しかし、この2週間で振り返るたびに、イベント中にいただいた多くの視点や意見、参加者の皆さまと交わしたコミュニケーションがどれほど貴重だったかを痛感しています。

工房見学と琉球舞踊で伝えたもの

今回のイベントでは、工房見学、琉球舞踊の鑑賞、そしてギャラリーでの作品紹介という流れで進行しました。特に工房見学では、職人たちが実際に作業している様子を見ていただきながら、紅型の制作工程を直接解説しました。参加者の皆さまが職人の一挙手一投足を真剣に見つめ、時に感嘆の声を上げながら質問を重ねてくださる姿に、私たちも非常に励まされました。

沖縄に自生する竹と女性の髪の毛で作られた筆を使い、「これで色を塗ります」と説明しただけでも、「こんなふうに色を差していくんですね!」と驚きの反応をいただけたことは、とても印象的でした。工房の代表で紅型の制作工程を20年以上説明してきた私にとっても、こうした新鮮な反応に触れることができたのは大きな喜びです。

手仕事を目の当たりにする価値

その一方で、こうした驚きや感動が今の時代だからこそ生まれるのかもしれないとも感じました。かつて手仕事を見る機会は特別なものではありませんでしたが、現代ではその機会が減り、非日常的な体験として受け止められているのだと実感しました。この状況は、私たちにとっては新たなチャンスであると同時に、「手仕事の価値をどう伝え、次の世代にどう繋いでいくか」という課題を突きつけられた瞬間でもありました。

紅型が持つ特別な背景と伝える使命

紅型は琉球王国時代に、王族や貴族の衣装として、また中国や日本への交易品として発展してきた工芸です。そのため、生活の中から自然発生的に生まれた他の工芸とは異なり、強いメッセージ性が込められています。紅型の文様は、琉球の文化や誇りを象徴し、外部の世界に向けた「自己表現」だったのです。

そのため、私たち作り手自身も時に「独りよがり」になってしまうことがあります。今回のイベントで参加者の方々から直接意見や感想をいただけたことは、紅型が現代にどう映るのかを知る貴重な機会であり、制作への姿勢を見つめ直すきっかけとなりました。

初めての挑戦がもたらした気づき

今回、琉球舞踊の鑑賞を取り入れたことや、普段見せることのない制作現場を公開したことは、私たちにとっても新たな試みでした。準備段階から「本当に楽しんでいただけるだろうか」「満足してもらえるだろうか」という不安が常にありました。それでもイベント終了後、参加者の皆さまから「また来たい」「紅型の魅力がよく分かった」と直接感想をいただけたことで、その不安は大きな達成感と感謝の気持ちに変わりました。

次の一歩に向けて

今回のイベントを通して得た気づきは、紅型という手仕事が持つ可能性や、その価値を再認識させてくれるものでした。次の取り組みに向けて、得られた反応や意見をしっかりと活かしながら、紅型の魅力をさらに広げていきたいと思います。参加してくださった皆さま、そして私たちの活動に興味を持ち、関心を寄せてくださる全ての方々に、改めて心から感謝申し上げます。

この1週間、イベントの余韻とともに歩んだ時間は、私たちにとって新たなスタートラインとなりました。これからも紅型が伝えるべき物語を大切にしながら、未来へ繋げていきたいと思っています。